「人は本能の壊れた動物」
精神分析学者岸田秀さんの言葉になります。
動物としてのヒト(ホモサピエンス)の歴史は約20万年あります。
我々は、遠い昔に原始人として野生の生活を送っていました。
ところが、約7万年前に言語を発明してからというもの、
他の動物とは比較にならない知的文明をどんどん発展させてきました。
農業、教育、印刷技術、経済、法律、産業革命、ビジネス、資本主義、宇宙開発、
インターネット、スマートフォン…
この発展とともに、ヒトの脳もどんどん肥大していきます。
しかし、この発展の度が過ぎて来たため、
明らかにヒトの生存を脅かす現象が起きるようになって来ました。
その証拠に、我々は他の動物には見られない奇妙な行動をとります。
岸田さんの言葉でいうと、本能が壊れて来たのです。
●空腹でないのに食べ続ける。
また、逆にお腹が空いているのに食べないこともある。
●敵が来ているのに、その場にとどまり続ける
(他の動物ならば、闘うか逃げるかしようとする)
●仲間を大量に殺す
●共同で幻想を見る
●生存と関係のない情報をどんどん頭に詰め込もうとする
●遠い過去や未来のことを思い煩い、目の前のことが見えなくなる
●生きることの「意味」を考えすぎて弱ってしまう
●脳ばかりを使い、身体の機能が落ちる
●イスに8時間座りっぱなし、目の酷使、長時間労働、夜勤など、
明らかに無理な身体の使い方をする
●マスクで顔を隠してコミュニケーションをとる
これらは脳の肥大が原因です。
ヒトが賢くなりすぎた弊害です。
人類史の中で、我々は今変曲点にいます。(山口周「ビジネスの未来」)
とにかく情報量が多すぎて、時代の変化のスピードが速すぎて、
人体がついていけなくなっています。
福岡伸一によると、実はヒトこそが物理的な生物多様性が最も低い動物だそうです。
現在の社会制度など、たかだか2000年でできたものになります。
しかし、我々はなかなか変われない。
過去を繰り返そうとしてしまいます。
他人と同じことをしようとする、寂しい動物なのかもしれません。
このような問題を解決するには、
社会の中で動物としての我々の特性をもっと大切にしていくことが必要です。
教育のあり方、長時間労働の是正、身体の使い方、運動、食事、性、睡眠など
改善の余地はたくさんあります。
そして、私たちは心の動物でもあります。メンタルヘルスの改善も必要です。
いつか本来の本能を取り戻す時代がやって来るでしょうか。
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